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若者のすべてのmakiのレビュー・感想・評価

若者のすべて(1960年製作の映画)
4.2
まともにあらすじを読まずに見始めると、5人兄弟という設定は把握するのが難しくて初めは苦労したけれど、5人を描くことで、どの時期(何歳の時)にどこで過ごし、生きる問題(労働・金)に直面し、移民として都市で生活を始めたのかなど、細やかな立ち位置の違いを表している。
人それぞれ家族や故郷への想いは異なるけれど、それは個人や家族の問題というレベルを超えて、貧困、格差、移民などの社会的な問題が色濃く影響するものでもあることが描かれていて、考えさせられる作品でした。

5人兄弟それぞれの厳しい現実に対する生き方の物語が描かれていく中で、自分の幸せを求めたヴィンツェンツォ(長男)や成功から破滅へと転落するシモーネ(次男)に身勝手さを感じ、ロッコ(三男)の姿に悲しみと善人の塊みたいなものを見、彼の幸せを願わずにはいられなくなる。そして、都市で学び職を得て、法律や規律を受容し都市生活に順応するチーロ(四男)が、終盤、ルーカ(五男)に話すシーンによって、この家族の物語を俯瞰的に捉えることができる、とても素晴らしい構成だった。(まさに、私はルーカの立場の気分)

その一方で、ナディアをめぐる物語は、チーロの解説があまりに冷静すぎて納得しそうになったけど、どう考えても、誰にとっても悲劇でしかない。そして、ナディアの強烈な存在感で一瞬忘れそうになるけれど、ヴィンツェンツォの妻、チーロの彼女も含め、ここで出てきた女性たちの存在・関係性の描かれ方も何だか印象的だった。特に、冷静で俯瞰的な視点を持つチーロは、兄たちの女性との関係を見ていた上で、この物語の続き、あの彼女とどうなるのだろうかと、ちょっと色々考えてしまった。ここに描かれる男女の物語は、社会の問題と地続きのものもあれば、それとは別のものが潜んでいるようで面白い。

真っ青な空や海に象徴される鮮やかな画の『太陽がいっぱい』と同じ1960年公開。どちらも鑑賞後に色々考えてしまう!
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