hi1oaki

大統領暗殺のhi1oakiのレビュー・感想・評価

大統領暗殺(2006年製作の映画)
3.1
ニュースや世界情勢への疎さが極端な人だと、“そうそうブッシュって暗殺されたよね”と刷り込まれてしまいそうなくらいに良くできたモキュメンタリー。
しかしモキュメンタリーとはだいたいにおいて現実をパラレルワールドで描くドキュメンタリーなんですよね。
この作品が訴えたいのは通り一遍なブッシュ批判ではなく、メディアというものがいとも簡単に非事実を事実らしく作れてしまうということなのかな。
現代社会においてそういった情報操作は実際に行われていてもおかしくない(というか行われているでしょう)わけで、基本的にメディアというバイアスがかかった情報は発信者が望む形に編集されたものなので、それを全て事実として受け取ってしまうのは危険である。
…と頭ではわかっていても、受け取る方も自分に都合のいい情報を優先的に身につけて武装してしまう。それは多かれ少なかれアメリカもアルカイダも同じでしょう。本編の中でもそういった“聴衆をリードする情報開示”的なことに触れられているしね。

アメコミではキャラクターの人気がなくなってくると、その死をイベントとして大々的に盛り上げる風潮がある。スーパーマンだってキャプテン・アメリカだって死亡経験がある。それは“死んで悲しい”という演出効果だけではなく、“彼らのいない世界はどうなるのか”というシュミレーションが面白い。ただし彼らヒーローはだいたい生き返る(あるいは実は生きていたとなる)。目的は商品価値の復活なので。
この作品、ラストに“実はブッシュは死んでなかった”くらいのウィットに富んだ軽さを持っててくれても良かったかな。“ブッシュ亡き世界”をちょっと生真面目に構築しすぎてて、結局暗殺のシーンが一番の盛り上がりになってしまっている感は否めない。

ていうか世間はブッシュが暗殺される映画よりも、監禁して拷問される映画の方が観たいんじゃないかな…と思うけどね。もちろん人道的に完全にアウトだと思うけど…。
hi1oaki

hi1oaki