アニマル泉

生まれながらの悪女のアニマル泉のレビュー・感想・評価

生まれながらの悪女(1950年製作の映画)
4.3
男たちを手玉にとって上流社会を成り上がる魔性の女を描くニコラス・レイのフィルム・ノワール。ハワード・ヒューズ傘下のRKO制作である。ニコラス・レイらしい奇妙な暗さが漂っている。ジョーン・フォンテインが悪びれてないのが不気味だ。今ならば多重人格だろうか?本人に負い目や後ろめたさが全くない。ロバート・ライアンとザカリー・スコットを翻弄する。
「階段」と「廊下」が印象的だ。冒頭、ジョーン・レスリーがパーティーの準備に忙しく廊下を右往左往する、階段をメル・ファーラーなど人々が上り下がりするが階段は描かない、そしてレスリーがバタンと廊下で倒れる、スーツケースにつまずくのだが、この倒れ方の激しさにこちらも動揺する。そして気づくとフォンテインが座っている、登場場面である。つまり慌ただしいオープニングでいきなり幽霊のようにフォンテインが現れる。レスリーのアパートの二階の廊下はライアンとフォンテインが別れようにも別れられない場面でも印象的だ。廊下いっぱいの距離を使ったラブシーンになる。「階段」は本作に頻出するがほとんどが人物が階段を下りてくる。例えば、ザカリー・スコットの豪邸の外階段はラブシーンの舞台だ。フォンテインはライアンとスコットとそれぞれを惑わしながら階段を下りてくる。ラング作品の撮影のニコラス・ムラスカが繊細な光と影を作り出している。そしてフォンテインが階段を上ると不幸が起きる。ライアンとスコットを間違えて階段を追いかける場面だ。ラストの大階段、全てを失ったフォンテインが一人寂しく階段を上がっていくのが印象的だ。フォンテインの嘘がスコットにばれる場面、フォンテインがカメラ前で嘘をしゃべりつづる奥から叔父のアーヴィング・ベーコンが階段バックでやって来る縦構図も素晴らしい。ニックはUPだ。各場面のラストカットのUP、フォンテインの不敵なUP、ライアン、スコット、レスリーの不安なUPが、見ている我々を動揺させて作品の不気味さを煽っていく。展覧会の双子の少女は何だったのだろう?
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