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天使の入江のtakのレビュー・感想・評価

天使の入江(1963年製作の映画)
3.7
物事にのめり込み過ぎて破滅していく姿を観るのは辛い。映画「天使の入江」でギャンブルの泥沼にハマっていく主人公は、銀行員のジャンと夫も息子も失った女性ジャッキー。

友人からの誘いで初めて行ったカジノで大儲けしたジャンは、賭博を嫌う父親の反対に耳も貸さず、ヴァカンスをカジノで過ごす為にニースへ向かう。ルーレットのテーブルで出会った二人は、その日大儲けをするのだが、翌日大負けしてしまう。しかし再び大金を手にした二人は車を買いドレスアップして、さらに一儲けしようとモンテカルロへ。彼女への恋心も芽生えてきたジャンと、自堕落な自分に恥じながらも賭けの快楽から逃れられないジャッキー。ラッキーはいつまでも続くものではない…。

ギャンブルを「お金のためじゃない。贅沢と貧困を両方味わえるのが魅力」だと言い放つジャンヌ・モロー。賭けている時の生き生きした表情を見ても、その瞬間のスリルに身を任せているのがよくわかる。こういう他人に理解されにくい自我がある女性を演じさせたら、ジャンヌ・モローは憎たらしいくらい巧い。ジャンを振り回す憎まれ役かもしれないが、人間の弱さをも演じてみせて、他の映画で見せるいけ好かないけどカッコいい女性像とは全く違う。

カジノを出て行くジャンを追いかけるジャッキーを、オープニングと同じ一点消去の構図で撮ったラスト。表面的にハッピーエンドのように見せながら、万事解決とは到底思えない不思議な余韻が残る。

ミシェル・ルグランの軽快な音楽が素晴らしい。ツキがくると再び流れて、二人の高揚感をセリフなしに表現する。ドゥミ監督とルグランのタッグだからこそできる見事な演出。そしてジャンヌ・モローの衣装を手がけたのはピエール・カルダン。この出会いで、二人は大恋愛に発展するのだ。
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