享楽

マルコヴィッチの穴の享楽のレビュー・感想・評価

マルコヴィッチの穴(1999年製作の映画)
4.5
奇特な物ばかりの面白さに加え、入り込むと15分間のみ俳優ジョン・マルコヴィッチの脳内空間を共有しマルコヴィッチの五感をリアルタイムで体感できる経験を与えてくれる洞穴、というのが多くの観客の笑いを誘うだろうし、ではこの超自然的な神々しい洞穴にマルコヴィッチ当人が浸入する、つまりメタ・マルコヴィッチ体験とは如何に!?と彼自身が穴に入っていったときはかなり興奮したが、そのナルシシズム満載!?な(あの表象はつまり彼が自分の事しか考えていないということを体現したのだろうか)しかし失笑してしまうことで奇しくもそれがやはり面白いという、いわば笑っちゃうものは笑っちゃうという体験がある。
主人公が人形師というのは結果的に人形師が人間師になる、つまり彼の作り出す理想的幻想(人形師)から、洞穴というモノ(=世界)から、幻想からの覚醒剤を与えられたために彼は理想的現実に生きることになるのだが、儚くも彼は世界の矛盾に耐えられず(というか世界=自然(他者)の側が彼をいつまでも許せない)自分がマルコヴィッチであり続けるという現実(!?)から追放された矢先には彼の二人の恋人からも追放されてしまう…。
7 1/2階の天井の低い世界において、身も野望も大きい人間はどうやら生きにくいようだ。
享楽

享楽