こたつむり

マルコヴィッチの穴のこたつむりのレビュー・感想・評価

マルコヴィッチの穴(1999年製作の映画)
4.0
★ この穴は深く、底が見えないほどに深く

ジョン・マルコヴィッチと言えば『仮面の男』…くらいの認識で鑑賞したのが10年以上前。完全に内容を忘れた状態で再鑑賞しました。

うわぁ。
これは…コメディじゃないですよね…。
確かに序盤は笑える部分もありますが、進むにつれて胸が痛くなるばかり。これは自分を見つめ直す物語でした。

だから、世間で賛否両論なのも当然の話。
シュールなタイトルの『マルコヴィッチの穴』から受ける印象と異なりますからね。昔の僕もそうだったのでしょう。だから、憶えていないのです。

でも、今の視点で捉えると。
若かりし頃に、闇の中を手探りで歩いていたことを思い出して…とても切なくなりました。確かに自分を定義するために“他人の物差し”を必要とした頃もありました。だから、主人公たちの気持ちが痛いほどに分かるのです。

これはまさしく喜劇と悲劇のミックスジュース。脚本を執筆したチャーリー・カウフマンの独特の視点が冴え渡る逸品です。

また、その素晴らしい脚本を上手く落とし込んだスパイク・ジョーンズ監督も見事な限り。初監督とは思えない手腕でした。

特にジョン・キューザックの負け犬感も然ることながら“キラキラしていない”キャメロン・ディアスの配置は、最高のファインプレーだったと思います。

まあ、そんなわけで。
タイトルや雰囲気に騙されないでほしい作品。
確かに人を選ぶとは思いますが、着目すべきは“言葉”。自分の言葉が相手に伝わる…そんな喜びを噛み締めることが出来る人にはオススメです。

そして、鑑賞した後に“青い鳥”を探すのならば。是非とも自分の奥のほうに目を向けてください。深い深い穴の中に眠っているかもしれませんからね。
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