Ricola

自由を我等にのRicolaのレビュー・感想・評価

自由を我等に(1931年製作の映画)
4.0
à nous, à nous la liberté !

タイトル、そして劇中繰り返される歌の通り、自由への強い意志をひしひし感じる作品だった。
しかしこの作品は意識高い系ではなく、全体的にコメディに振り切っている。

明るくて楽観的で、人生に対して前向きな気持ちにさせてくれるけれど、現実の厳しさもちゃんと描かれていて、そのバランスが良くずっと飽きずに観ていた。


「勉強は義務である。なぜなら自由を獲得できるからだ」
全くの正論を、学校で子どもたちが勉強している中歌われるシーンは、勉強してこなかったであろう人々を中心に映すのに、皮肉的な効果を生み出している。

単純作業、流れ作業ばかりの囚人生活。しかし外を出ても工場で同じような作業。
機械化された、文明社会を皮肉るようなストーリー展開はチャップリンの『モダンタイムス』を彷彿とさせる。(しかしこの映画の方が先に製作されている!)

主人公の一人の間抜けな行動によって、人がどんどん巻き込まれてちょっとした騒動になってしまう様子が、しつこいけれどやっぱり面白い。
こういったドタバタ喜劇には、人情味を感じられるような優しさが根底にあるようだ。

そしてルネ・クレールらしい、音へのこだわりは特筆したい。
人物の動きとともにそれに適した音が鳴るのや、風の音、状況を音楽で秀逸に表しているのなど、少し大げさにも思えるが、それはアニメのようなお茶目さを感じられて良い。
やはりサイレントではできなかったことを、クレールは存分に楽しんでいるように伺える。

正反対のタイプの元囚人2人の友情の形にぐっとくるし、彼らの示してくれた選んだ道に、ポジティブに人生を捉えられる。

皮肉を込めて機械化の進んだ資本社会を痛烈に批判しつつ、あまり慎重になり過ぎない笑い要素たっぷりで、人生を謳歌することを自信満々に肯定してくれる。

バリエーション豊かな音の表現と底抜けの明るさが最高な楽しい映画だった。
Ricola

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