のほほんさん

ロード・オブ・イリュージョンののほほんさんのレビュー・感想・評価

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あくまで個人的な話。
原作のある物語が映像化されるのは良くあることながら、原作を先に読んでいる割と数少ない例。
本作を特別視するのであれば、それは原作者自らが映像化したということ。


いくつも映像化されているパーカーの「血の本」の末尾を飾る作品。
そりゃあ、原作をまんま映像化したらとんでもない地獄絵巻となるし、別に小説をそのまんま忠実に映像化することが映画化の役割とも思わぬ。だから本作が原作とだいぶ違うお話になることそのものは別に良い。

しかしなあ。

個人的に思う「血の本」を始めとするパーカー作品の魅力は、気づかないだけで身近なところに異世界が存在している様な世界観にある。言うならば、庭にある石をめくってみたら見たこともない気持ち悪い無数の虫が蠢いていた、でもなんか目を離せないというような、なんとも言えない気色悪さだ。
雰囲気という点では、「キャンディマン」は原作の雰囲気を如実に実現させていたように思う。

そこへきて本作。
ストーリーは別に良いのだが、せっかくニューヨークからロサンゼルスといった都会があるのに、なんで変な人が肩寄せあってカルトに身を投じていそうな田舎にクライマックスを持っていくのか?
ニューヨークのダムーアの事務所の、都会なのにジメジメしてカビの生えたような汚さや、逆にロサンゼルスのスワン邸の鼻に付く小綺麗さとか、それらの方が得体の知れぬ強大な悪の力の復活の場に相応しかった様な気がする。
少なくとも原作は、真夜中の大都会を舞台にして人が沢山いるはずなのに見知らぬ力が跋扈する地獄絵巻を展開していて魅力的だったと思う。
そんな雰囲気を感じたかった。

それと、奇術ではなく本当の魔術を操る、ニックスとスワン。

もっとカッコよくできんかなあ⁉︎
メタボオヤジなニックスもそうだし、スワンの小心者具合も、本物の魔術を操るにしては説得力が無いのよ。

一見するとカルト宗教みたいなニックスの魔術。スワンはその魔術を信じたからこそその後継となり得る地位にいたのかもしれない。ただの迷える子羊たちたる信者が土壇場で地面に埋められ、ニックスがスワンと共に世界を滅ぼす的な方向を向く展開なんかも、別にわからないでもない。
なんだけど、その肝心の2人にカリスマ性が無いのよ。その結果、より胡散臭い信仰宗教感が漂ってしまっているのだよ。

大手資本で撮られている以上、パーカーの意向がどの程度反映されたのかはわからん。しかし、一応パーカーの創造を自分て監督したということは、ある程度はそれを達成できているはずなのではと思う。

しかしなあ。
勝手に期待してそれに合わないと批判、というのもどうかと言われればどうなのよ、というところだが、あれほど魅力的だった原作の良いところをちっとも伝えきれて無いように思うのですわ。

特殊メイクにグレッグ・ニコテロが関わっているそうな。
そういやニックスはややバブっぽくはあったなあ