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オペラハットのkyonのレビュー・感想・評価

オペラハット(1936年製作の映画)
3.5
本日はキャプラの『オペラ・ハット』。

田舎町の青年ディーンは突然巨万の富を遺産相続することになり、都会へ。
しかし都会には、彼の遺産を目当てに色々な思惑や誘惑が潜んでいる。その誘惑の1つが新聞社の花形記者のベネットによるハニー・トラップなのだが、女性と付き合った経験のないディーンは彼女に惚れ込んでしまう…。

というね、ああ、青年よ…となる始まり笑
その始まりから、事態は二転も三転もして、裁判沙汰になるのはキャプラっぽい。
善人が窮地に追い込まれてからの復活劇、勧善懲悪ではないけれど、『スミス、都へ行く』の前兆しかない。
田舎と都会の関係性もありそう。


若いゲイリー・クーパーがディーンを演じているんだけど、お美しい…、『モロッコ』から5〜6年して、良い年の取り方を…やっぱり体格が良いから、スーツがキマリますね。

ただディーンが善人設定なのはわかるんだけど、ちょっとどこか短気な雰囲気だったり、結構ボコッと一発くらわせたりしている感じがいわゆる典型的な当時の善人像だったのか気になる…。少なからず現代からしたらちょっと荒っぽいところもあるよなぁ、と。

面白かったのはベネットの描かれ方!新聞記者、っていくつかの作品でも見るから、女性が社会進出した中で就ける職業の1つだったんだなぁと思いつつ、キャプラ作品は女性が良い意味で強い気がする。情に厚い男性を支える女性の姿が後ろから、ってよりは横で、あるいは前から引っ張っていく感じ。

それとベネットがハニー・トラップ的な、自分の女性性を利用して自分の為に行動を起こす姿がなんだろう、良かった、自覚的で。
男性と平等を目指している途中のこの時代に、あえて自らの性を認めてからそれを自覚的に用いる部分にある種の映画における娼婦性を感じる。

ただベネットは新聞記者だから、他のレディと同様に帽子を被ってる。帽子もやっぱり記号だよね。

30年代特有のハイキーがベネットをキラキラに輝かせ、クーパーの美しさもより増量。笑

キャプラの傑作、『素晴らしき哉、人生!』までの伏線を拾い上げていく作業のよう。
積み重ねて、この傑作を生んだんだから、その積み重ねを観るのも面白いね。
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