青山

オペラハットの青山のレビュー・感想・評価

オペラハット(1936年製作の映画)
3.7

ひょんなことから大富豪の遺産を相続し、田舎からニューヨークに出てくることになったディーズ氏は、取材のため正体を隠して彼に近づいた記者のベーブに恋をしてしまい......。


田舎者で都会のことには無知だけど、頭は切れて純粋な心を持つディーズ氏の魅力がすごいよ。
彼を騙して近づいたヒロインが彼に徐々に惹かれていってしまうのも分かります。そんなヒロインが彼を評して言う、「私たちが忙しすぎて忘れてたものを持ってるの」という言葉が全て。最近の世の中はそんな忘れてしまっていたものを取り戻そうとしている人が多いように見えますね。そうやってみんながディーズ氏みたいになればいいと思います。

で、面白かったのが、終盤でディーズ氏が「キチガイだから大金を相続する資格がない」として裁判にかけられる展開。
この裁判シーンでのディーズ氏の反論には法廷ミステリのような気持ち良さがありました。
といっても話の内容自体は
「君は急にチューバを吹き出すからキチガイじゃ」
「いえいえ、人間には誰しも癖というものがあるんですQ.E.D」
みたいな今見るとあり得ないような偏見を今見ると当たり前の理屈でやっつけるだけの古臭い話です。ただ、それにしても流れるように淀みなくユーモアさえ織り交ぜたディーズ氏の語り自体がカタルシス。これが本当の語るしす。

話の内容自体は古びても、信念を持つことのかっこよさとユーモアを忘れないことのかっこよさは変わらないのだと思い知らされる名作でした。
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