オペラハットの作品情報・感想・評価

「オペラハット」に投稿された感想・評価

電気羊

電気羊の感想・評価

3.2
ドストエフスキーの「白痴」を思わせるような物語。主人公である純朴な演奏家が巨額の遺産を相続したことをかぎつけた雑誌社から、主人公のゴシップ記事を書くように依頼され女記者は主人公に色仕掛けで接近してくる。だが、主人公の誠実な人柄に惹かれた女記者は、偽っている罪悪感に駆られ自らの正体を告げようとするのだが…。その後、財産横取りを狙う輩から、主人公は正常な判断が出来ない精神病患者だとして相続権剥奪奪の裁判を起こされる。裁判とは真実を明かすことではなく、検事と弁護士の騙し合い。どちらが裁判長や陪審員に強い印象を残すかで判決が変わる。まあ、ラストはハッピーエンドで救われたのが「白痴」とは違うところだね。
ニューヨークの大富豪が急死し、田舎町で工場を営む彼の甥が遺産相続人になる。金が目当ての人間たちが彼をとりまき、騒ぎをおこすが…。シネマクラブより。
正直で純粋すぎると変人扱いされてしまう世の中って何なんだ!
最後はスカッと✨さすがキャプラ監督
 原題をみれば分かるように後からみると『スミス都へ行く』の習作めいているが、クライマックスの逆転裁判はなかなか見事だった。といっても、スター俳優と脚本のために作られた典型的な所謂「古典的ハリウッド映画」なことは確かで、演出面ではほとんど何も言うことがない。
 
 が、設定と脚本にはかなりの仕掛けがある。しかも、それらは「全ての道はローマに通ず」のごとくクライマックスそして本作のテーマにつながっている。主人公の名前からしてそうだ。「ロングフェロー」は前世紀つまり19世紀のアメリカの詩人のことで、主人公の職業と重ねているだけでなく、その素朴すぎる作風は明らかに主人公の性格のメタファーとなっている。
 レストランの作家集団に主人公がおちょくられるシーンで、ウェイターが主人公に、その作家集団が「あちらのラウンド・テーブルにいます」と教える。このラウンド・テーブルというのは、「アルゴンキン・ラウンド・テーブル」という当時の作家たちの社交サークルのことで間違いないだろう(当時も今も評判はよろしくない)。つまり、モダニズム文化全盛のご時世を謳歌する気取った作家連中と、クリスマスカードに載るような単純素朴な詩を書く田舎者の主人公を対比させているのは明白だ。同様の対比が、オペラ協会と主人公および貧農との間にも成立している。
 
 それだけではない。本作の序盤で、シダーたちが主人公に会いに行くとき、町で荷運び中の男に「ディーズさんをご存知かね?」と尋ねると、男は「みんな知ってます」と答えて荷物を積みに行ってしまう。戻ってくるまで待って、「今すぐ会いたい」「誰に?」「ディーズにだ」「いい人だ。気さくで誰とでも話す」……男がディーズのもとに案内してくれるには、「ディーズのもとに案内してほしい」とはっきり要望を伝えなければならない。
 このまだるっこしいシーンは、2つの点でクライマックスの裁判の伏線となる。まずは、老姉妹の証言の真相である。もう1つは翻訳のせいで分かりにくいが、ディーズに対する男の「democratic, talks to anyone」という評価が、ラストの主人公の陳述につながっている。
 つまり、ここにはすでに、本作のテーマが示されているのだ。「言葉」である。まず、主人公やこの男のような田舎者が使う、解釈も文脈も必要とされない単刀直入な言葉遣いがある。また、事実を誇張・歪曲して大衆を面白がらせるための新聞記者の言葉遣いがある。そしてウソをつくことなく人を騙すための法律屋の言葉遣いがある。
 脚本上の仕掛けは、他にも多分いろいろある。主人公のラストネーム「Deeds」や「マンドレイクフォールズ」なる町の名前にも意味がありそうだ。
 
 もちろん、田舎的な素朴さ・善良さ・誠実さがあり独立志向のつよい主人公を、古き良きアメリカの男性像として理想化する、キャプラの政治的嗜好は本作ですでに明らかである。わざわざグラント将軍の墓を登場させて、クーパーに自分の思想を語らせているくらいだ。こうしてノスタルジックに理想化されたアメリカ的男性像は、映画作家でいえば今ならイーストウッドにまで受け継がれている(白人であることは暗黙の大前提だ)。
 キャプラは、こうした理想の実現を「言葉を使う能力」に結びつける。つまり、演説に。ただ理知的に語ればよいのではなく、直接話しかけたり比喩や冗句を交えたりと聴衆を楽しませ、自分への好感度を上げていくことが演説においては求められる。すなわちそれは、王を抱かない民主主義国家におけるリーダーに求められる資質である。democratic, talk to anyone.
 ハリウッド映画において、演説は以後も危機・困難に対するナショナルな団結をもたらし、弁論術は以後も登場人物が卓越性を示す際に用いられるだろう。
miho

mihoの感想・評価

2.9
"或る夜の出来事"が大好きなので
こちらも気になって鑑賞♡

ストーリーは"ローマの休日"に
ちょっと似ていて好きだったけど
後半から、ついていけなくなった。。

階段の手すりを滑るシーンとか
エコーのレッスンをするシーンとか
「変人」が口癖の姉妹とか
細かい設定は面白かったです。
shatoshan

shatoshanの感想・評価

3.8
ウブで実直なゲイリークーパーの拳と清く貧しい群衆の声でストーリーが押し進められる。壮快感はあるけど結構強引。
階段のエコーのレッスンは何だったんだろう?
まる

まるの感想・評価

3.8
安定のキャプラ節。鑑賞後、心がふっと軽くなる。この後の作品群にずっと貫かれるキャプラの信念が、すでに本作から見てとれることが何とも嬉しい。
ディーズが完全無欠な善人ではない描写が効果的。
フランクキャプラ監督では『素晴らしき哉、人生!』と姉妹編。ゲイリークーパーが美しく、巨額の遺産が入った素朴で純粋な田舎の変人をアメリカの良心そのもので演じていて、彼の最高演技だと思う。それを最初は騙して記事を書いてた女記者をキャプラ組のジーンアーサーが演じる。『或る世の出来事』『ローマの休日』の逆バージョン。人を信じる事の尊さを描き続けたキャプラ監督の世界、大好きです。『天国から来たチャンピオン』とか影響されている。愛すべき脇役たちも素晴らしい。前澤社長同様、貧乏人に金を配る人はいつの世にも変人扱いされ、叩かれるという事か。
いかにもキャプラ監督らしいアメリカ的なサクセス・ストーリーである。少々無骨なゲイリー・クーパーの演技が愛らしく彼を取り巻くキャラクターが共々「善人印☺️」を発揮。しかし主人公の成功の裏には陰謀が…という毎度のパターン。後半にかけてハラハラさせる脚本の妙技よ。そして最後は見事な大団円。同監督の「スミス都へ行く」と併せて観るといっそう面白い「アメリカの自由と尊厳」を謳った古典的作品。時代を経ても色褪せることのないクオリティーの高さ。
nago19

nago19の感想・評価

4.0
善人がやられっぱなしでなく随所で小気味良い返しをする痛快コメディー。時代や人への風刺も散りばめられ見終わってスッキリ。面白かった。ゲイリークーパーカッコいい。オペラハットは折り畳みの観劇用帽子のことで、原作となった小説の題名とのこと。
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