Qちゃん

闇のバイブル 聖少女の詩のQちゃんのレビュー・感想・評価

闇のバイブル 聖少女の詩(1969年製作の映画)
4.2
女性へと変化しつつある少女ヴァレリーが持つ性に対する憧れや恐れ、罪悪感、嫌悪感といった様々な思いをダーク・ファンタジーとして表現したチェコの映画。
あのシュバンクマイエルもこの監督好きらしい。

イメージは「オペラ座の怪人」にも繋がる部分が多いと思う。
「白面の吸血鬼」と「ファントム」に代表される、性の持つ抗えない暗い魅力と、その暗さへの恐れ、そして圧倒的な存在感と包容力を持つ父親の面影。
対する「オルリーク」と「ラウル」に代表される、優しさや愛の繋がりとしての性の光の側面、心休まる、現実において理想的なパートナー、そして自分を気づかってくれる兄としての存在。

その他、ヴァレリー自身の描かれ方も、矛盾するようで実は精神描写としては筋が通っており、見ていて興味深かったり、時には共感できたりする。

悪者であるはずの吸血鬼にも、見ていて恐ろしさを感じる事はない。

編集・演出は、いかにもチェコのシュールレアリズム。白昼夢のように取り止め無いが、こういう映画に特有の甘く濃密な空間的な息苦しさがなく、落ち着いてみていられる。
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