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フレンチ・コネクションのRのレビュー・感想・評価

フレンチ・コネクション(1971年製作の映画)
4.7
冒頭いきなり物々しい音楽が猛然と鳴り響きグオーンと迫りくるタイトル! うおおおお! こいつぁ面白い映画が始まりそうだ! とワクワクするんやけど、意外とそうでもない。主人公はジーンハックマンとロイシャイダー演じるブルックリンの麻薬捜査官ポパイとクラウディ。ふたりが麻薬の密売人を追跡していく様子が、特に何も起こらないまま、セリフ少なに延々と淡々と描かれていく。なかなか手柄が立てることができず、仲間の刑事を死なせてしまった過去もあるポパイは、業績のためか、苛立ちのためか、はたまた正義のためか、何とかして大物のワルを取っちめたいと思ってる。と、クラブで怪しいカップルを発見。彼らは表向きは小さな商売をしているが、明らかにマフィアとつながりがあり、かなりの大金を握っている様子。確実にイケナイことしてる。だんだんと、彼らがフランス人のコネを使って大量のヘロインを仕入れ、莫大な利益を狙っているらしいことが分かってくる。1時間ちょい過ぎたくらいからじわじわ犯罪チェイスの熱が高まってきて、その辺りからボクもようやくノレてきて、前半あまりよく分からず眺めてたシーンも、あとからあとから意味がハッキリしてきて、なーるほど! と呑気に思ってたら、いつのまにやらポパイの運転する凄まじいカーチェイスが始まってるではないか!!! そのとんでもない迫力にボクも前のめりで巻き込まれる! ひたすら猛スピードで直進できる電車 vs 高架下の車! 勝ち目があるわけない! 普通に街やからね! けどそんなことお構いなし! 一般人の運転やら通行人やら、危険なぞ一瞬たりとも省みず、ポパイはサイコな執念で追っかけに追っかける! このシーンにポパイの行き方が凝縮してる!!! クレイジー!!! 彼の横でずっとマイルドに連れ添ってるのが、他の作品ではポパイに劣らずクレイジーな、ロイシャイダーであるとこも面白い。また、フレンチのコネを演じるのが、ブニュエル映画でいつも何やかやに振り回されまくるフェルナンドレイなのもおかし、本作ではシリアスな悪者を演じてて、地下鉄でのポパイとのコミカルなやりとりのあとのバイバイは何か気分上がりましたねー! で、このヒートアップしきったチェイスのおと、さらなる熱量に到達するのか! と思いきや、再び冷却して淡々と事件の大詰めに近づいていく。いよいよのクライマックスは、荒れ果てた建物のなか、スリリングだけどドライに展開、ラストは、えっ!!!てとこで幕を閉じる。なんて後味の映画だろう! このやるせなさ、苦々しさ、ずーーーんとお腹に来るヘビーさ。見終わった後も悶々と考え込んでしまうし、いろんなシーンが頭の中に蘇ってくる。正直あまり楽しめなかった前半も、意味深長はものとして新たに心に迫ってくる。荒涼とした大都会の風景が、エッジの効いたドキュメンタリー風の演出や編集が、いますぐもう一度確認したくなる。これは確実に二度目の方が楽しめる作品だな、と思った。リアルでルースでタイトでグレーな、寒々しさの漂う低温クレイジー。フリードキン監督は、この作品のあと、極彩色の高温クレイジーな、L.A.大捜査線へと発展していった。そう考えると何だかとても感慨深い。

と、書いて約1ヶ月がたった今、本作品への愛はますます高まっております。不思議!
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