いきなりスコボコにされるヴァンチュラ、さらに車運転してたら追い回され、やめて欲しくば金寄越せと脅迫される。そんな大金ないので、金持ちのオカンを頼るが、また女か!と言われて帰るヴァンチュラが切ない。『死にゆく者への調べ』(72)と違い、なぜ追われるかはミステリ的だがオチは平凡、だがそれが主眼じゃなく、『激突!』(71)的に追われまくるヴァンチュラを楽しむ映画なのだ、これは。しかし『死にゆく者への調べ』と共通するのはクライマックスがオーケストラと重ねられることで、当然元ネタは『知りすぎていた男』(56)でジャンル映画の伝統に則っている。ここでマッセリはヴァンチュラの親友の妻。今までなぜ私を口説かなかったの?とエレベーター内でヴァンチュラに迫る。ふたり、歳取ったなあという感慨とともにかつての映画がフラッシュバック。そこにはもちろん『死にゆく者への調べ』もあるわけだ。両作とも、脚本書いたのはトルシエの通訳フローラン・ダバディの父ジャン=ルー。