TaiRa

僕の彼女はどこ?のTaiRaのレビュー・感想・評価

僕の彼女はどこ?(1952年製作の映画)
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この密度で90分ないって凄い速さだな。サーク流ミュージカルコメディ。

独身老人の大金持ちが自身の遺産を初恋女性の家族に与えようと思い付き、身分を隠してその家族の中に入り込む。貧乏な生活(と言っても中流だけど)に辟易しながらも何だかんだ幸せな家族に、老人が手回しして大金を与えちゃう。すると家族はお金に振り回されてどんどん壊れていっちゃう。拝金主義に対する皮肉。舞台が20年代に設定されていてラストは株価暴落=世界恐慌の始まりだが、それがハッピーエンドになる。バブル崩壊してお金を失い、慎ましやかな生活が戻って良かったじゃん、というオチ。近過去のアメリカを批評的に描くのはサークの特徴か。お金があるだけでは幸せにならない、という結論を見届け雪に降られながら帰って行く「お金持ち」でしかない老人の寂しさは何だろう。本当の家族を持てなかった老人が「心は彼らと共にある」のはせめてもの救いかな。テクニカラー撮影による鮮やか過ぎる画面、緑をメインに置いた美しい色彩設計の本編を観て来たので、雪の白さに埋め尽くされたラストも生きる。複雑な注文をする若者役でジェームズ・ディーンがワンカットだけ登場する。
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