秋日和

ポルノグラフの秋日和のレビュー・感想・評価

ポルノグラフ(2001年製作の映画)
4.0
余計なものが足され、大切なものは引かれていく。ポルノ映画監督であるジャン=ピエール・レオーが望んでいるのはゼロの状態なのに、彼の周りがそれを許さない。「部屋の埃は拭えず、叩くと増える」し、誰かに会うとその人の匂いがついてしまう。動かしたくはないカメラは動き、爪にはネイルが施されて、静寂の中に音楽が流される。極めつけは喘ぎ声だ。無許可で、或いは本人の知らぬ内に勝手に足されていく。外野によって映画が蹂躙されてしまうことは日常茶飯事なのだろうけど、レオーはそれに対し特に強い反発を示すこともなく、ただただ俯いていく。何故ならば、劇中に高々と宣言されるように「沈黙が最大の抗議」だからだ。そして沈黙とはつまり、ゼロの状態なのだと思う。
だだっ広い空間にゼロから家を建てること、交際相手との関係を解消すること。この映画で度々登場するゼロの状態は、あまりにも悲しい。悲しい状態を求めている彼は、もっと悲しい。ダンスをしている女性が萎んでいく音楽につられて動きを止めてしまう、ゼロの状態に向かっていくその移り変わりだって同じだと思う。
性欲から始まって孤独に着地するボネロの演出は、本作に於いても素晴らしい。ゼロの状態を求めていた老人が一人きりの夜に寂しさを埋め立てるために流してしまう(空間に足されてしまう)音楽の切なさといったらどうか。どうしようもなさを封じ込める空間創出にかけてボネロ以上の監督は滅多にいないような気がする。新作も楽しみ。