ミノリ

サルトルとボーヴォワール 哲学と愛のミノリのレビュー・感想・評価

3.5
これが本当なら、すくなくともこの映画の中のボーヴォワールは、とても寂しそうで、ほんとうに幸せだったのかと問いたくなる。そんな感想を抱かせる映画だった。
実存主義の実践例に語られる契約結婚も、ほとんどサルトルの都合のため、つまりは、帰る家=ボーヴォワールを確保しながら自由に恋愛を謳歌するための、言い訳にすぎないように描かれている。
「世界初の女性哲学者」「実存主義の女王」と称され、女性たちに尊敬され、時には恋愛関係を結んだとしても、ずっと不全感が残っている。
生涯を通じて闘い続けたとテロップのあとエンドロールが流れるけれど、ほんとうにそうなのだろうか。もしほんとうだとしても、監督は救ってやることはできなかったのだろうか、と思う。
ボーヴォワールを演じるアンナ・ムグラリスは、終始厳しく不満そうな顔つきで、女であること、サルトルの伴侶であることの、生きづらさを演じているように見えた。それだけに一瞬、サルトルとの会話で破顔する瞬間は、何か観ていて嬉しくなった。
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