まちゃん

怒りの日のまちゃんのレビュー・感想・評価

怒りの日(1943年製作の映画)
3.9
魔女狩りの時代の中世ノルウェー、牧師アプサロンと若き後妻アンネが暮らしていた。アプサロンの母メレットは親子ほども歳の離れた2人の結婚を認めていない。アンネにとって厳格な姑の下での息詰まる様な結婚生活。そんな時に海外からアプサロンの前妻の息子マーティンが帰ってくる。マーティンはアンネと同世代の若者。アンネは禁断の愛に溺れていく…。この物語には2人の魔女が登場する。魔女の疑いを掛けられた老女マーテとアンネだ。あらすじには登場しないマーテ。しかし、前半はかなりの比重をかけてマーテを中心に魔女狩りの実態を克明に描き出す。牧師アプサロンを含めた旧知の知人も自白を迫り味方はいない。更に拷問による自白強要。予め用意された結論に向けて被疑者を追い込んでいく魔女裁判。狂信的な社会正義の恐ろしさを感じた。そして浮上するアンネの亡き母親の魔女疑惑。その中でアンネは禁断の愛に突き進む。家庭内で見せる彼らの姿。それは人類の弱さや愚かさの象徴だ。一つの家族を通して魔女狩りの犠牲者、宗教関係者、傍観者、魔女狩りの対象にされる事を恐れる庶民と多角的に社会の病を表現する事に成功している。
まちゃん

まちゃん