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怒りの日のmasahitotenmaのレビュー・感想・評価

怒りの日(1943年製作の映画)
3.8
デンマークのカール・ドライヤー監督が、ナチス・ドイツ支配下に製作。
陰影を活かしたモノクロ映像で、魔女狩りを題材に宗教(教会)と人間の本質を問う。
原作は、16世紀に実際にあった出来事(アンネという女性が魔女裁判にかけられ火刑に処された)をもとにノルウェーのハンス・ヴィアス・イェンセンが書いた戯曲「アンネ・ペーダースドッテル」。
ベネチア国際映画祭審査員特別賞受賞。
デジタルリマスター版で鑑賞。
原題:(デンマーク) Vredens dag (1943)

中世のノルウェー。
魔女狩りが行なわれていたある村で、老女のヘアロフス(アンナ・スヴィアキア)が魔女とみなされ牧師のアプサロン(トーキル・ローセ)の家まで逃げてくる。
家にいた若い後妻のアンネ(リスベト・モーヴィン)は、亡くなったアンネの母親が"死者も生者も呼び寄せる"魔女だったと初めて聞かされる。
ヘアロフスは、アンネを後妻にした牧師のアプサロンに、魔女であったアンネの母を密かに助けたように自分の命も助けてほしいと懇願する…。
そんな中、アプサロンと前妻との一人息子マーチン(プレベン・レアドーフ・リュエ)が帰郷。初めて会ったマーチンとアンネは親密な関係になる。
そして、激しい嵐の夜、死にゆく教区民ラウレンティウス(オーラフ・ウッシング)の家から戻ったアプサロンは、アンネから2人の関係を知らされた上に、ある決定的な言葉を投げつけられた直後、突然倒れて亡くなる。
厳格で陰険なアプサロンの母(メレーテ(シグリズ・ナイエンダム)は、魔女であるアンネが死に至らしめたと告発する…。

「誰にも、君のような目はない。
純真で、無垢で、清らか?
いや、深く謎に満ちている」

「死ぬことを願った」

「復讐したのね」

新訳聖書「ヨハネの黙示録」の終末思想にもとづく、ミサ曲「怒りの日」が全体の基調をなす。
最後の審判の日、アンネは不義と夫の死を願った罪で地獄に落ちるのか?
アンネの気持ちを確認せずに結婚し、若いアンネから青春や幸福、愛情、子どもを産むことを奪った牧師は、
陰険で冷淡、不寛容な牧師の母は、
アンネと恋仲になりながら最後はアンネを見捨てるマーチンは、
アンネたちを魔女として裁いた教会の牧師たちは、
最後の審判で天国にいくのか?

泉のそばや舟の上で戯れる若い二人を撮る野外でのカメラ、
アンネの視線を陰影を活かして斜めから撮る屋内のカメラ、
光と陰を巧みに利用したモノクローム映像が美しい。

(蛇足)
死を願えば他人は死ぬ?
→魔女なら願えばできると恐れられてた時代のお話。(そういえば、「源氏物語」でも、御息所が葵の上を怨念で殺す場面がありますね)
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