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ナポレオン・ダイナマイト/バス男のnetfilmsのレビュー・感想・評価

3.9
 アメリカアイダホ州の田舎町、プレストン高校に通うナポレオン・ダイナマイト(ジョン・ヘダー)は今日もバスの到着を待っていた。水色のTシャツを着た風変わりな男は、運転手にバレないようにそっと窓を開け、持っていた人形に紐をつけて外に放り投げる。少年が訝しげに振り返る中、ナポレオンの人形は痛そうにコンクリートの上を転がっていた。一角獣の絵を描きながら学校に着いた男は、柱につないだボールで一人遊びする。かと思えば同じクラスの同級生に首を絞められる。まだお昼前にも関わらず、婆ちゃんに学校まで迎えに来て欲しいと願う主人公は、一貫して冴えないオタクな高校生である。引きこもりでチャット中毒の兄キップ(アーロン・ルーエル)や、オフロードバイクが趣味の祖母と3人暮らしのナポレオンは、見るからに冴えない高校生だった。自家用車もないため、小学生が主な乗客であるスクールバスで高校へ通っては、変わり者としていつも周囲に馬鹿にされ、いじめられ続けていた。ところが、祖母は砂漠でバイク事故に遭って入院し、かつてアメフトでレギュラーに選ばれず未だに未練がましく燻ぶり続けている叔父のリコ(ジョン・グリース )が保護者代わりとして家にやって来る。

 内気で少し風変わりな高校生ナポレオン・ダイナマイトは、メキシコ系移民の転校生ペドロ・サンチェズ(エフレン・ラミレッツ)と出会い、少し前向きになる。白人でありながらスクール・カーストの最下位に位置するオタク少年は、同じく風変わりな一匹狼のペドロと意気投合する。そんな2人の友情を羨望の眼差しで見つめるデビー(ティナ・マジョリーノ)の姿などナポレオンは知る由も無い。進学資金を稼ぐために、「デビーのグラマラスショット」という写真屋をしているデビーは、奇人変人の2人に微妙に歩み寄ろうとする。自転車の紐で括り付けられたローラー・スケート、ハッピー手話クラブに入部したナポレオンの意図、ダンス・パーティにサマー・ホイトリー(ヘイリー・ダフ)を誘う怖いもの知らずなペドロの大胆さに女はなびく。夢にまで見たライオンとタイガーのミックスの「ライガー」、ネットで買ったタイムマシーンの低周波、人の形のピニャータをなぶる2人の病巣は、孤独を埋めてくれるパートナーの存在を追い求める。

 まるでウェス・アンダーソンのような絵画的構図を基調とする物語、ダンス・パーティで流れたCyndi Lauperの『Time After Time』、突如意表を突くような『特攻野郎Aチーム』のメインテーマと、兄貴が掴んだ黒人美女との幸せ、生徒会長選挙で、Jamiroquaiの『Canned Heat』を踊ったナポレオンの病巣は、必死の表情でじゃじゃ馬にしがみ付く。僅か40万ドルの低予算ながら、人生の落伍者たちを見つめるジャレッド・ヘスの目線はどこまでも優しい。
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