こたつむり

ナポレオン・ダイナマイト/バス男のこたつむりのレビュー・感想・評価

3.8
★ 暴投気味の超変化球

ORANGE RANGEの『ラヴ・パレード』が似合う作品…ではなく。「退かぬ、媚びぬ、省みぬ」を地で行く主人公の青春物語。良くも悪くも「感想を書きたくない」…なんて思ってしまう作品でした。

何しろ、本作の見どころは主人公。
その個性はとても異彩ですが “彼を真正面から受け止めてもらう”ためにも…先入観に繋がることは書きたくないのです。

やはり先入観って大切じゃないですか。
誰もが外見に拘る(清潔感を保つ)のは、少しでも印象を良くしたいからだし。あまりにも我が道を往く外見は「他人を寄せ付けない」イメージが先行してしまうのも当然なのです。

でも、それが本質なのか…というと違うわけで。外見と内面が違う…なんてことはよくある話。もじゃもじゃ頭で、しかめっ面で、Tシャツをズボンの中に入れて、傍若無人の言動を繰り返す主人公が良い奴なのか、悪い奴なのか…それはフラットな立ち位置から捉えてほしいのです。

また、本作は不必要に媚びていません。
誰が何と言おうと主人公は主人公だし、映画は映画。他人に後ろ指をさされようとも、卑屈な想いに囚われる必要なんてどこにもない…そんな監督さんの想いがひしひしと伝わってきました。

そう考えると、日本では作ることが出来ないタイプの作品かもしれません。村意識が強い我々は「他人からどう見られているのか」を気にし過ぎるところがありますからね。主人公のように「俺は俺だ」と突き抜けるのも大切なのでしょう。

それに今は改題されましたが、史上最低と言われた邦題(『バス男』)も本作を認知させるに一役買ったわけですからね。まさしく「世の中に無駄なものなど何一つない」のですな。

まあ、そんなわけで。
青春物語でありコメディ…という大多数に訴求するジャンルにも関わらず、確実に人を選ぶ作品。笑いの方向性としても“まったり”としていますので、相性が悪ければ「退屈」の一言でしょう。

でも、何かがピタリとハマれば。
思わず口角が上がり、忘れることが出来ない作品になると思います。なお、最近の流行りである“スタッフロールは最後まで観ましょう”パターンなのでご留意ください。
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