一

デスペレート・リビングの一のレビュー・感想・評価

デスペレート・リビング(1976年製作の映画)
-
ゴミで出来た革命の寓話である。ウォーターズの悪趣味選民意識に怖気づきながら、この映画を素晴らしいと堂々言える自分でいたいと思うのだった。実際素晴らしいのだけれど。「憎らしい木どもが私の酸素を盗んでる!こんな景色は耐えられない!アメリカ中の緑をセメントで舗装してほしい!」と喚きながら、車で犬の死骸を思いっきり轢くミンク・ストールが素晴らしいのは言うまでもなく、ファシストの女王側に寝返った彼女の最期の叫び「たかが弾丸一発でファシズムの火は消せない!」もかっこいい。そのファシスト女王イディス・マッセイが治めるゴミの街モートヴィルに暮らすカップルを演じるスーザン・ロウとリズ・ルネイも素晴らしい。トランスの男性であるロウが、宝くじの当選金で性転換手術を受けたものの、リズにゲロ吐くほど拒絶され、その張りぼてのチンコを切断するシーンなどはなかなか胸に訴えるものがあった。モートヴィルの町や女王が住む城のセットは悪夢的に安っぽく、そこらの路上に転がっていた貧乏人をスカウトしてきたというエキストラや出演者の身体の上を這いずるゴキブリと見事にマッチしていた。食鼠に始まり食人で大団円を迎えるまで完膚なきまでに貫かれたバッド・テイストに陶然とする他はないのだった。
一