東京キネマ

蒼き狼 地果て海尽きるまでの東京キネマのレビュー・感想・評価

2.0
松方さん追悼22本目です。この映画、松方さんが出演していなければ、絶対に観ることはなかったろうと思います。そもそも、「映画」を創るということは魂の発露と言いますか、言葉を超えたパトスのようなものがあるからこそ「映画」として企図されるものでしょうし、そういった情念を感じるからこそ興味を持って観るんだろうと思うのですが、なんというか、この映画、人の心根に響いてくるものが一切ないのです。これはもう、映画として面白いとか面白くないとか、そういったレベル以前の話じゃないかと思うのです。

角川映画を持ち上げる方々が沢山居るのは十分承知していますが、「映画」を小説を売るがための広報コンテンツにしたという一点だけで、私にとってはもうダメなのです。あるいは、この時期に、あの731部隊の森村誠一の原作を使うって、一体どういう神経をしているのかとも思うのです。この人たちの映画ってのは、中身なんかどうでも良い、派手に作為して、日本人がビックリすることを見せて(それが嘘でも)、大量の広告費を投下すればコンテンツ・ビジネスなんて軽いぜ、というのが痛いほど解り過ぎて、結果的に2006年のこの年に、それがまったく通用しなくなったということを自ら証明しちゃったような、ある意味記念碑的な作品とも言えるような気もしますが、まあそんな大そうな話ではありません。はっきり言えば、ゴミ映画です。

しかしね、こんな映画でも、松方さんが登場するとアンビバレンスになってしまうのですよ。登場人物すべてが学芸会レベルのマネキン芝居をしているからこそ感じてしまうのかも知れませんが、松方さんは時代も空間も超えて、そこに存在するモンゴル人に見えるのです。経験の智と言えばそれまでなのかも知れませんが、この存在感は凄いですよ。現在生きている役者の中で、アラビア風のパクリ衣装を着て、日本語喋って、いきなりモンゴル遊牧民の王に見える人なんています?

誰も褒めてくれませんがね。松方さんですから。だから、松方さんの追悼鑑賞をする意味があるのですよ・・・(笑)
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