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バットマンの教授のレビュー・感想・評価

バットマン(1989年製作の映画)
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子供の頃から「マーズ・アタック」ぐらいまでのティム・バートンが好きで、恐らく映画監督というものを意識したのもこの人からだと思う。
今にして思えば、単に漠然と好きだと感じていただけで何が好きだったのかはあまり思い出せず、近作は特に興味も湧かなくなってしまった。

改めて「アメコミ映画」全盛の現代では、本作についても語り尽くされている感じもあって特に敢えて言葉にするようなものはないのだが、観直してみて気付きはそれなりにあった。

当時はそこまで思わなかったが、本作は当時とすれば相当にチャレンジングな映画であることは座組からもわかる。
というか、その観点がめちゃくちゃで面白い。
「リコリス・ピザ」でブラッドリー・クーパーが演じたジョン・ピーターズが製作。
この曲者感のある名(迷)物プロデューサーの元で、当時はまだ無名のティム・バートンが監督。
ダニー・エルフマンの劇伴に、プリンスによる主題歌。
はたまた、バットマン/ブルース・ウェインをマイケル・キートンで、ジョーカーはジャック・ニコルソン、ヒロインのビッキーはキム・ベイシンガーというよくよく考えたら珍妙な顔ぶれ。

映画の中身としても、当時はここまで「ダークヒーロー」的に作劇を施した作品というのは初めてではないかと思うほど斬新なつくり。
ヒーローの登場シーンを「ホラー的」に演出する斬新さや、画面の色彩、ゴッサム・シティの美術デザインや、1930年代のアメリカを彷彿とさせるような「マフィア映画」的な世界観など、あらゆるものが投入されている。

特にCGでもなく、またデジタル撮影でも画面には、現在のような画面を覆い尽くすような情報密度もなく、物理法則を超越したようなアクションが不可能な時代こその(緩さも感じつつ)現代とは違う映画の面白さを思い出した。

ただそれ故に、少しばかり画面構成自体の緩さや、ドラマ部分(演技で見せる部分)の凡庸さも気になったりはするし、特にジャック・ニコルソンの怪演と呼ぶべき演技は楽しさ、面白さもありつつ、やり過ぎているとも感じた。
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