TaiRa

13回の新月のある年にのTaiRaのレビュー・感想・評価

13回の新月のある年に(1978年製作の映画)
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ファスビンダーの恋人だったアルミン・マイアーの自殺を受けて作られた。

男娼の立つ川沿いの公園に夜が来る瞬間、長いテキストが画面を埋め尽くし、男と男のまぐわいを映す……が、男を買った男はオンナだ。「テメェ、チンコついてねえじゃねえか!」と男娼たちに袋叩きにされるオンナはズボンずり下ろしたまま逃げ帰る。エルヴィラはかつてエルヴィンという男で妻も娘もいたが、ひとりの男の為に男を辞めた。彼女は女にも男にもなれないでいた。鏡は分裂した彼女を映す。恋人に捨てられ孤独を埋める為に男装して男娼を買おうとする。彼女の出生の秘密を知るシスターに教えられるのも残酷な事実だ。おぼろげな存在を自覚した孤独な魂が浮浪する。Suicideの"Frankie Teardrop"が虚しく鳴り響く。エルヴィラはかつて愛した男に会いに行く。男は権力者となっており、ガランとしたオフィスで部下と一緒にミュージカルごっこをしている。異様な光景。エルヴィラは自分の居場所を見つけ出せないまま孤独に死んで行く。彼女の元へ駆けつける家族に、少しの優しさを見て映画は終わる。
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