ミドリ

ムルと子犬のミドリのネタバレレビュー・内容・結末

ムルと子犬(2008年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

生き物が大好きな子供に、父が犬を連れてくる(しかも大型化が期待出来る足の太さをパッケージ写真で確認済み)というざっくりとした内容のみの理解で視聴開始。
勝手にハッピーコメディーまたは感動ものだろうと期待していたが、視聴後、ベートーベンやベイブ等の様なものを期待して見る作品ではなかったかなと思った。

以下あらすじと感想。

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生き物なら虫でもなんでも愛するムルは、パンクに傾倒している姉、軍で働く母とオーケストラ演奏者の父とフィンランドで暮らしている。

ある日父が仕事先の東ベルリンで市場に立ち寄った際出会った子犬。その犬は紐で繋がれひよこと一緒に箱に入っていた。その店のおばさんによるとその犬は『オーチャッカ』だから安く買ってくれ、さもなくば(殺されてしまう)と聞き、可哀想になりムルへのお土産として連れ帰ってきた。
ムルは喜び『ミルスキュ』と名付けた。

その犬はみるみるうちに大きくなり、可愛い程度だったいたずらも酷くなっていく。ムル以外の言う事もなかなか聞かなくなってしまった。
ある日病院の先生に、犬は序列を大事にする生き物だということ、ミルスキュは東西ドイツ時代にコーカサス地方で軍用犬として使われていたコーカサスシェパードという犬種ではないかと言われる。

軍用犬で本来気性も荒く体格も大きい為躾しきれず、次第に手がつけられなくなる家族。
生き物を愛し過ぎるが故に飼うという事が出来ないムル。
近隣・地域住民等にも迷惑がられる様になり、ある時ムルはミルスキュを連れ家を出たが…

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見ていくうちに思ったのは
生き物を愛するムルはいい子に育ったとは思うが、食物連鎖や生き物の根本的なものを教えなかった両親は結果的にムルを苦しめたのではないかということ。
ディスカバリーチャンネルみたいのを見せといて、ライオンがシマウマ襲うの見て喚く(ように育った)のってどうよ、っていう。教えてないのに見せるんだ。

その苦しみや葛藤を教えられるのではなく自ら学ばせるのも一つの育て方だとは思うが、犬を飼うにあたり躾の仕方も教えず『ムルの言うことしか聞かないのよ~』と呑気に子供任せの様な状況になっている場面では、流石に親へイラつきと若干のハラハラがあった。

森へ家出し、熊と対峙したムルを守る為立ちはだかったミルスキュを見て、最終的に里親を募集するという展開は、きちんと躾をし最後まで飼う事を期待していたのであまりいい気分はしなかったが、同犬種を飼ったことがある牧場の家族に引き渡した事でその方がミルスキュは幸せだろうと結末には納得。
全ての原因はムル一家にあるから。
牧羊犬として働くことは、オーチャッカ=群れを守るものに適した居場所だと思う。

動物を『飼う』という口先だけでない本当の意味での責任の重さと、その種の理解と躾の重要さ、生き物を愛する事・共に生きる事は種の理解無くして出来ないという事を描いた、ある意味反面教師的な作品という点では評価できると思う。

最後、撮影にあたり傷つけられた動物は誰もいませんでした、うまくいくと沢山ほめてもらいましたみたいなテロップは好感が持てた。

今思えば、やはりムルの様な子供に向けた作品なのかもしれない。
なんか、フィンランドらしいかも。
ミドリ

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