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イノセンスのkouのレビュー・感想・評価

イノセンス(2004年製作の映画)
4.0
《純粋性とは》
「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」の続編で押井守監督自身も9年ぶりの長編アニメ作品。舞台は少佐が姿を消してから3年後の世界。良い意味でとても押井監督の作家性が強く現れた作品だと思う。映画を見る時に監督の個性が強いほど嬉しくなるのだが、今作の個性の強さが僕はとても好きだ。

主人公はバトー。このバトーがとてもいい味を出している。前作で素子が失踪した事から、彼自身は生活に飽きてしまっている。くたびれ、無気力なバトーがハタリという愛玩用ガイノイドの暴走の真相をトグサと共に追っていく。その物語全体のトーンがハードボイルドで、終末感と相まった雰囲気がとても良い。

台詞の殆どが何かからの引用という実験的な部分も特徴的だが、やはり特筆すべきは今作の結論だろう。バトーの「犠牲者が出ることは考えなかったのか…」からの台詞は押井監督自身の考えをとても反映していると思う。純粋性、完璧さというものを着き詰めた結論に驚かされる。精神と肉体が分離した人間にとって、彼らは違うものへ完璧さ、完成形を観ていく。その対象は人形であり、犬であり、子供なのだ。

また、今作の魅力はバトーの存在感、キャラクター性に尽きると思う。ある愛した女性がいなくなってしまい、犬との生活をする男が、ある事件でその女性と再び会う。彼が素子の意志の入った人形に服をかける場面など彼の悲しさが込められていて最高だと思う。「行けよポイントマン…」「バトー、忘れないで…」など名台詞にも痺れた。

万人受けする作品ではないかもしれないが、押井監督の当時の思いが強く現れたとてもおもしろい作品だと思う。映画全体の渋さも含め、とても楽しめた一作だった。
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