ひろ

4月の涙のひろのレビュー・感想・評価

4月の涙(2009年製作の映画)
3.5
アク・ロウヒミエス監督によって製作された2009年のフィンランド映画

まず、この作品を理解する上で、フィンランド内戦というものを知らなければならない。1917年のロシア革命により、独立宣言をしたフィンランド。独立により情勢は不安定になり、飢餓、高い失業率、不況といった状態に陥っていた。そして、富裕層の白衛軍と労働者層の赤衛軍による内戦が始まった。

最初は赤衛軍の優勢で始まった内戦だが、農民や女性が兵士として戦うのには無理があり、白衛軍に追い詰められていく。そんな状況下で、女性兵士たちは、乱暴され殺されていった。この映画のヒロインも乱暴され、殺されかける。しかし、戦争で理性が麻痺した人間ばかりの中で、己を失わない兵士と出会う。

前半の展開はかなり重い。しかし、アーロとミーナに芽生える気持ちが、悲惨な状況下で美しく映し出される。そんな、戦場のロマンス映画で終わるのかと思ったら、ミーナを裁判する判事のエーミルが物語を複雑にする。自分の仕事に嫌気がさしながらも、処刑に没頭していて、アーロにまで興味を持つとんでもないキャラクター。

フィンランド俳優の演技も素晴らしかったけど、戦争映画、恋愛映画という枠を越えたストーリーには引き込まれた。この映画で感動的なのは、自己犠牲の精神と信念を貫く心だ。ラストの終わり方には、哀しみと小さな希望の入り交じった気分にさせられた。こういった歴史を映画で伝えることも、映画の大切な役目だと思う。
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