けーはち

処刑人ソガの凄まじい人生のけーはちのレビュー・感想・評価

処刑人ソガの凄まじい人生(2009年製作の映画)
3.6
肉屋の父親を殺された少年ルイシトは仇敵を探しながら、将軍の下で悪党を誅伐する処刑人(La Soga)に。ところが、将軍は悪党どもの上納金次第で生殺を裁く真の巨悪だったと知ってルイシトはある行動を起こす──ドミニカ共和国産のバイオレンス・アクション。

権力の犬が愛と自由に目覚めて腐敗した権力者を見限る話運び自体は月並み。邦題の「凄まじい人生」──まあ確かに凄まじいよ。しかし、平和ボケした我々にとっては考えられないくらい人命の安いお国柄の方が相当尖っている。お尋ね者は理不尽な責め苦を与えて容赦なく街頭で処刑、路上強盗に遭っても警察には「轢き殺せ」と言われ取り合ってもらえない、銀行強盗が現れても警官はゆうゆうと素振りで準備運動、市民巻き込み銃撃戦、犯人はマスコミの前で公開処刑されても少し問題視されるぐらいで済む。これらが何と冒頭で「実話に基づく」って言われるのだ(何が脚色で何がリアルなのか本当に判断に困る)。

主人公ルイシトのキャラも個性的で、父親(ヤギを轢き殺したチンピラに食ってかかったら返り討ちにされ殺された。人命が軽すぎる)の跡をついで肉屋を営むのだが、本人は菜食主義者。父親の仇を探すため処刑人は副業としてこなしているが、周りには「豚の餌代を稼いでいる」と公言している(その言い訳はジョークなのか、それとも本当に建前として通じるのかは不明。人を殺す代償が豚の餌代にしかならないとはさすがに安すぎる気がする)。

屠畜、解体から食肉に化ける過程を早回しで見せた上で、屠殺と殺人シーンがたびたびイメージとして被るのも秀逸で、映像表現として先進国の映画にもひけをとらない。総じて荒削りだが欧米にはないナチュラルな無法っぷりが個性的な作風。