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愛情の決算のchiyoのレビュー・感想・評価

愛情の決算(1956年製作の映画)
3.5
2015/5/17
それだけ佐分利信が巧いということになるのだろうけれど、楢崎のあまりの煮え切らなさに苛々するばかり。悪い人ではないものの極度の事なかれ主義で、頼れないし張り合いはないし打っても響かない。楢崎の妻・勝子が大平に惹かれてしまうのも、致し方なしといった感じ。ただ、勝子を演じるのが原節子なだけあって、息子の誕生日を忘れて男に夢中になるとはどうしても思えない。が、失職中の楢崎の代わりに働いていた勝子は、これまでの家に籠りきりだった彼女とはまるで違い、活き活きとしていてすこぶる綺麗。そんな彼女が楢崎の再就職により再び家庭に入った時、自身を籠に捕らわれた鳥に準えるのがベタとはいえ印象的。楢崎も勝子も戦争の被害者であること、結婚で情熱と安定のどちらを取るか等、興味深い部分はあるものの最終的な答えは微妙。勝子の最後の選択も果たしてあれで良かったのか、息子のことばかりが気になる。
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