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愛情の決算のlingmudayanのレビュー・感想・評価

愛情の決算(1956年製作の映画)
3.5
原節子といえば小津映画の清廉なイメージしかなかったので、今作のような不倫に走る情熱的な女性は新鮮だった。冒頭から遡って戦後10年を追いかけていく時間の処理は日本映画らしからぬ印象を受けたし、その中で多くのキャラの特徴と変遷、さらには戦後日本社会の風俗をも手際よく描いている佐分利信監督の手腕には舌を巻いた。その佐分利信演じる夫はうだつが上がらず、妻の不倫が発覚してもきちんと向き合おうとしない腑抜けだが、その連れ子の愛情は勝ち得ているというところに救いがある。不倫相手の三船敏郎は色気があり、原節子と連れ立って歩きながら気持ちを打ち明けるシーンは緊張感があって本当に素晴らしかった。神保町シアターで今回観ることが出来たのは僥倖。
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