シンタロー

テナント/恐怖を借りた男のシンタローのレビュー・感想・評価

テナント/恐怖を借りた男(1976年製作の映画)
4.0
ロマン・ポランスキー監督、脚本、主演によるサイコスリラー。
パリで部屋探しをしていた気弱で真面目なポーランド出身のトレルコフスキーは、空室が出たというアパートへ行く。前の住人シモーヌは窓から飛び降りて重症だという。シモーヌの見舞いに行くと、全身包帯で瀕死の状態。友人だという女性ステラと知り合うが、自殺未遂の理由はわからないと言う。シモーヌが亡くなり、アパートへ引っ越すが、少しの物音にも抗議する気難しい住人達に精神的に追いつめられていき…。
この混沌とした精神描写は、ポランスキーの代表作「ローズマリーの赤ちゃん」に通じるものがあります。ポランスキー自らが主演するという力の入りようですが、幼少期アウシュビッツに連行され、母親を虐殺され、フランスに移り住んだという生い立ちに、強く影響されているような気がしました。迫害を受けることで、幻想や悪夢に苛まれ、味方まで敵に思えてくる辺りの描写は秀逸。シモーヌと同じ運命に飲まれようとしていく様は強烈。舞台となるアパートの陰湿さもたまりません。
様々な不祥事があり、作品の出来不出来も激しく、スランプ期と言われる時期もあったポランスキーですが、個人的には偉大な巨匠の一人だと思っています。役者としてもマチュー・アマルリック風の神経質な芝居で、後半の女装の件なんか最高だと思います。ヒロインはイザベル・アジャーニ!アデル直後で初々しく、出演シーンは少なめですが、トンボメガネにロングブーツが特異で、なんとも言えない可愛さ。シェリー・ウィンタース、ジョー・ヴァン・フリート、リラ・ケドロヴァ等、不気味なバイプレーヤー女優が勢揃いです。
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