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テナント/恐怖を借りた男のkouのレビュー・感想・評価

テナント/恐怖を借りた男(1976年製作の映画)
4.5
ロマン・ポランスキーらしさ、というか妄想に取りつかれた男という物語はこの監督に描かせたら間違いないという感じ。監督自身の壮絶な経験から今作も生まれたのだと思うと見方もだいぶ変わってくる。改めて色々な意味で破格の監督だと思う。今作はそんな巨匠の味が溢れる傑作だった。

あるアパートに住むことになった主人公。そこの前住人は窓から飛び降り自殺をした女性だった。次第に彼の周りでも不思議なことが起こり、陰湿な隣人たちによって彼女は飛び降りたのだと思い込んでいく。映画の一つ一つのシーンがとても不穏で、鏡を何度も写したり、遠くに見えるトイレであったり、壁に埋め込まれている物であったり、その不気味で陰湿な感じはさすが。そしてラストで加速していく。

「反撥」「ローズマリーの赤ちゃん」にも描かれる、現実と妄想の区別がつかなくなっていく描写は見事。改めてこの監督にしか描けないホラー映画だと思う。
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