こたつむり

少佐と少女のこたつむりのレビュー・感想・評価

少佐と少女(1942年製作の映画)
4.0
★ フランス陥落
  …それは駐屯地の防衛力の問題

「やだ、なにこれ、楽しい」
思わずそんな言葉が口から洩れるほどに素敵な作品でした。

物語としては。
汽車代を誤魔化すために主人公が年齢を謀るコメディ。…なのですが、さすがに無理がある設定です。何しろ、演じたジンジャー・ロジャースは当時31歳。これを12歳と言うのは…。ね。かなり厳しいですよね。

でも、それを承知で鑑賞すれば。
「なんでおまえら気付かないのか」というお約束も含めて、口角がグググッと上がるのは必至。何しろ、台詞の一つ一つが十二分に練られていますからね。スルリと物語がお腹の底に入ってくるのです。

これがビリー・ワイルダー監督の実力。
しかも、監督としてのデビュー作。
もうね。バケモノですね。「初期作品はクリエイターのエキスが濃密」なのが定説とはいえ…70年以上も前の作品なのに、現代と変わらない感覚で楽しめる完成度の高さ。さすがです。

惜しむべくは邦題の地味さ。
あまりにも端的すぎるので「お。面白そう」と惹き込まれる部分が少ないと思うのです。とは言え「彼女は12歳」とか「目が悪い少佐が彼女の年齢を間違えた件について」などの邦題にしても…むぅ。邦題って難しいですね。

ちなみに本作を日本でリメイクするとしたら、是非とも安達祐実さんに演じてほしいところ。現在の年齢(36歳)でも十分に通用すると思いますよ。万に一つの可能性もありませんが、邦画関係者がこの文章を読んでいたら是非ともご検討願います。

まあ、そんなわけで。
ご都合主義の塊ですが、それが素敵なコメディ。野暮なことは言わないで目の焦点をずらすように鑑賞すれば…きっと微笑ましく楽しめると思います。白黒映画だから…という理由で避けるのは勿体ないですよ。

最後に余談として。
本作の中で特筆したいのは“口説き文句”。
もう僕には用のない代物ではありますが、実際に使ってみたいオシャレな台詞でした。是非とも若人は積極果敢に使ってみてください。責任は取れませんが…。
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