福福吉吉

マルコムXの福福吉吉のレビュー・感想・評価

マルコムX(1992年製作の映画)
4.0
急進的な黒人解放運動家マルコムXの生涯を描いた伝記的作品。

第二次世界大戦中、悪事に手を染めていたマルコム(デンゼル・ワシントン)は、窃盗の罪で刑務所に送られる。刑務所にて同じ受刑者のベインズ(アルバート・ホール)からイスラムの教えを学び、出所後、イスラム教組織のトップであるイライジャ・ムハンマド(アル・フリーマン・Jr.)を師と仰ぎ、弁舌で黒人たちに訴える黒人解放運動の活動家になる。しかし、マルコムの攻撃的な主張は、色々なところに敵を作ってしまう。

マルコムXはデンゼル・ワシントン以外演じることができないと思うほど、素晴らしい演技だった。若い頃の軽薄な感じから、獄中での卑屈な感じ、そして覚醒して黒人解放運動家になる鋭い感じ、イスラム教組織からの離脱した冷めきった感じと全て見事に演じきっていた。

ストーリー構成も秀逸で、当時の黒人に対するアメリカの状況を観ている側に自然と理解できるようになっており、202分の作品だが、無駄なところは一切ないように感じられた。

警察に黒人が捕まって、面会と治療をマルコムXが要求し、マルコムXが他の黒人たちを引き連れて病院まで行くシーンは圧巻だった。病院の前に警官が並び立ち、その体面に黒人たちが集まる一触即発の雰囲気から、治療が成功したことを受け、マルコムXが片手で指示して静かに黒人たち去っていくカッコよさに痺れた。

マルコムXの信奉していた黒人中心の教えは私個人としては極端に感じたが、アメリカの世相として黒人差別の厳しい時代で、黒人たちの奮起を促すには極端でも黒人主導を訴えなければならなかったのではないかと思った。そして、マルコムXが心身を捧げて尽くしたイスラム教組織から除け者にされるところは、どんな組織でも大きくなると汚れていく悲しさを感じました。

作品としてはかなり面白かった。時間的に手を出しずらいけれども一度は観る価値のある作品だと思います。
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