ゆん

バーニング・ムーンのゆんのレビュー・感想・評価

バーニング・ムーン(1992年製作の映画)
3.9
諸々の事情でそうせざるを得なかったキャスティングが、奇跡的に必然性を帯びる瞬間があって。
オラフ・イッテンバッハ監督演じる主人公は堕落しきったジャンキーなんですが、体型も緩んで顔は攻撃的なのに覇気がなく、反抗心の奥底にロマンをもて余してそうな風貌が絶妙に役柄とマッチしています。
過去を断片的に回想し薬物に溺れる姿が何故か間抜けで、涙を誘いました。

映画自体はカラオケ映像の間奏部分みたいな何でもない映像がおおく、ストーリーも独創性に長けたものではないのですが、「暴力」の描き方には並々ならぬ情熱を感じました。
ただ血や内臓が噴出するということよりも、それに至る衝撃を捉えようとしていた。なかなか映画で人が撲殺されるところって見ないんじゃないかな。非人道的なストーリーもあいまって、かなり痛々しいシーンになっていた。
ラスト出現する地獄絵図は、石井輝男の『地獄』を更にグチャグチャにしたような悪趣味っぷりで最高。永遠と続く男の悲鳴や、ストーリーのトンチンカン具合も石井輝男っぽいかも。
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