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ヒズ・ガール・フライデーのryosukeのレビュー・感想・評価

ヒズ・ガール・フライデー(1940年製作の映画)
4.0
今まで見てきた映画で一番スピード感のある作品かもしれない。ノンストップで滑らかなショット間、シーン間の繋ぎ、猥雑な新聞社の中での大量の被写体が過ぎ去っていく横移動撮影、ひっきりなしに早口で繰り広げられるセリフの応酬が相まって、凄まじいリズムを作り出している。92分という短い上映時間でありながら、密度が高過ぎて若干疲労するほどだった。
本作のケーリー・グラントはなかなかの異常者で、建物に放火して重い机を消防士に運ばせようかなどというセリフがめちゃくちゃで笑ってしまう。ラルフ・ベラミーが演じるヒロインの婚約者を「ラルフ・ベラミーに似たやつだ」と表現するセリフなどメタで面白い。
ジーン・ロックハートは「死刑執行人もまた死す」と同様に卑小で情けない敵役で、記憶に残る好演。
タイプライターを連打するロザリンド・ラッセルと電話に捲し立てるケーリー・グラントの挙動はセッションのようにすら見え、言葉がすれ違っていようが彼らの相性がバッチリであることを的確に示す。その状況の中でヒルディと婚約者の関係を悪化させるのも上手い。
机を三回叩く動作の回収から始まるクライマックスの畳み掛けとタイミングは圧倒的。婚約者による母親のスピーディな回収、記者達の顔面のフラッシュバック、偽札の発覚…「三つ数え」る動作は本作で先取りされていたのか。
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