半兵衛

風と共に散るの半兵衛のレビュー・感想・評価

風と共に散る(1956年製作の映画)
4.0
この時代特有の絵の具のようなカラーを生かして作り上げた美麗な映像世界はまるで絵画のよう(特に夜のホテルでのセットのはずなのに窓に波が映るシーンの耽美さには思わずうっとりした)だし、何気ない日常の風景にあるものを非日常の映画ワールドに仕上げるサーク監督の繊細かつ上品な演出手腕には目を見張るものがあるが、肝心のロック・ハドソンとローレン・バコールのメロドラマが今一つ盛り上がらないためちょっと肩透かしされた気分になる。

むしろこの作品は主役二人の恋模様をサポートする立場のはずのロバート・スタックとドロシー・マローンの兄妹の屈折したドラマの方に力が入っている印象で、確かに見終わったあとは親友であるロック・ハドソンと常に比べられ自身の能力不足によるコンプレックスに苛まれ自滅していくスタックとハドソンに幼い頃から恋い焦がれているものの振り向いてもらえず奔放な生活に走り、そして兄と自分の恋情にけりをつけるマローンの結末の方が心に残っている。そういった意味では確かに高尚ではあるが、メロドラマとは言いがたい気も。

バコールは恋愛ドラマなのに目付きがノワールに出演しているような険しさなので最初は違和感があったが、結婚した夫の嫉妬や様々な苦難に頑張って耐えようとする気丈さがあの顔立ちによって際立っているのでこれはこれでありかと。

あと複雑な役柄を見事に演じてアカデミー賞助演男優賞を受賞したロバート・スタックの熱演も見所だけれど、顔立ちといい声といいどことなく安部徹にダブって見えるのでちょっと苦笑いしてしまう。
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