暮色涼風

悪い子バビー/アブノーマルの暮色涼風のレビュー・感想・評価

4.9
35年も外へ出たことがなく、狂った母親に虐待されて育てられ、映画『ルーム』よりももっともっとエグい境遇で生きてきたバビー。
善も悪も、生も死も、なんの概念も持たない純粋なバビーが、外へ出て様々な影響を受け、成長していく話。
サイコホラーサスペンスに、ロードムービーに、ヒューマンドラマに、ロマンスといった、あらゆるジャンルが盛り込まれている、初めて観たタイプの映画だった。

後半のライブで、バビーがマイクに喋ると、それはアバンギャルドな音楽となり、カルト的な人気を博す。という、そんな展開に持っていけるロルフ監督の想像力も卓越しているし、このシーンは必見の価値あり。
所々、躁鬱とした絵画を見ているような気持ちになる画作りも凄い。ロルフ監督の作品をもっと観たくなった。

主人公バビーへの感情移入のさせ方も面白い。
急に、猫の死体を持った人が「生意気なやつはキライだ」と言いながら殴ってきて金を奪ったら、そいつは理不尽な変人って思うけど、こうやってしっかりバビーを丁寧に追って見せられると、そんなぶっ飛んだ言動もちゃんと因果や理屈があってそういう行動をとっているのだと納得できてしまう。

そして衝撃のラスト、まさか泣かされるとは思わなかった。
暮色涼風

暮色涼風