キャッチ30

旅情のキャッチ30のレビュー・感想・評価

旅情(1955年製作の映画)
3.9
アメリカ人女性ジェーンは休暇でロンドン、パリを経由してベネチアを訪れる。ジェーンは高揚と同時に不安を感じる。彼女は悠々自適に観光名所を廻るのだが、そこにカップルの姿を見かけると寂しさに打ちひしがれる。自分は幸せでは無いと。そんな彼女は骨董品店主のレナートと出逢い、恋に落ちる。しかし、レナートには妻子がいる。

ここまで聞くとドロドロの展開を思い浮かべるが、決してそうならない。ベネチアの街並みやジェーンと少年マウロのやり取りが活気に満ち、醜悪さを感じさせない。むしろ、物語の中心はジェーンの黄昏と淡い恋だ。

監督のデヴィッド・リーンは一人の中年女性の心の機微を映し出している。一人の男との出会いが女をより美しく輝かせる。カフェでの演奏やチークダンスも一役買っている。