ろ

旅情のろのレビュー・感想・評価

旅情(1955年製作の映画)
5.0

「奇跡を望んでいるなら、そのための行動も必要よ」

泣いちゃうよ、こんなの。
キャサリンヘプバーン演じるジェーンが悲しそうな顔をするたびに、ウワッと感情が溢れてしまいました。

どこを見渡しても写真を撮りたくなるほど素敵な街ヴェネチア。
同じ宿の観光客は夫婦ばかり、女一人のジェーンは少し取り残されたような寂しさを抱く。風景を写真に収めても、お酒を飲んでも、目につくのはカップルばかり。
そんなとき、出会ったのは…。

街の広場のカフェ。
のんびりしていると、向こうから顔見知りの夫婦が来るのが見える。
ジェーンは頼んだコーヒーを隣に置き、椅子を立てかけて、いかにも誰かを待ってます風を装うの。
夫婦は気付かず通り過ぎる。
ふーっと力が抜けたところに、後ろから気になる男性が現れる。
だけど彼は、ジェーンが誰かと待ち合わせをしているって勘違いして行っちゃうの。
呼び止めることもできず、今にも泣きだしそうな顔で彼の後姿を見送るジェーン。
カメラがすっと引いて映すもんだから、余計に切なさがこみ上げてきます。


クチナシの花言葉は「わたしは幸せ者」。
ジェーンが思い出話をするでしょう。
むかし、舞踏会でクチナシの花を付けたかったけれど、高くて買えなかったのって。
それが今では手に入るようになった。
けれど、その花も橋の上から落としてしまう。
男の人がなんとか拾おうとするのだけれど、あともう少しのところで手が届かない。
列車に乗る時もそう。
クチナシの花はずっと憧れのまま、物語は終わってしまう。

男女の行方を花で表現する、デヴィッドリーン監督の趣に酔いしれてしまいますね。












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