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わが谷は緑なりきのvivoのレビュー・感想・評価

わが谷は緑なりき(1941年製作の映画)
5.0
見た後に家族のことを想わずにいられない名作。家族一人ひとりがそれぞれに思い合い行動する様が折り重なり、ひとつの美しい絵になっている映画。

いろんな事が起こる。人生は思い通りにはいかない。でも、どんな時でも家族の愛があれば何とかやっていけそうな気がする。究極の悲劇を乗り越えなければならない時、糧になるのは、最後まで自分のことを想ってくれる誰かが存在していること、存在していたこと。最期の時に見る回想がたとえ悲劇だらけだったとしても、その幕が降りきる瞬間には「わが谷は緑なりき」という想いだけが残ると信じたい。最後の最後の一瞬の緑の時が、永遠の現実になると。

冒頭、少年が「飴玉」や「宝島」で幸せになるところがよかった。「物が溢れすぎて幸せが遠くなる」というよくある説教の意味がすごくわかった気がする。たいそうな物を介さず人を幸せにすることができたなら、自分が幸せになることができたなら、人と人は、たぶんもっと深く通じ合うことができる。一冊の本、おんぶ、歌、食事、一緒に住むこと、味方を貫くこと。この映画には、人に優しくしたい時にとるべき行動のヒントが溢れている。

それにしても、昔の映画俳優は身体と声がとにかくいい。役者という職業が、人間を本能的に魅了する動物的優位性を備えた人間に準備された肉体労働であったことを感じざるを得ない。
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