ネズミツオ

悪夢のファミリーのネズミツオのレビュー・感想・評価

悪夢のファミリー(1979年製作の映画)
4.8
ある家族と主人公を取り巻く人間模様をフィルムがフィルムを通して展開するデ・パルマとピノ・ドナッジオの
ポップオーケストラが融合した異色コメディ。
たった独りで食事をしたり、映画を観たり、
友人と会話をする時でも、その一瞬はフィルムの1コマ。
主人公デニスは「僕は人生のエキストラ」なんて
嘆くけれど、脇役がいなくちゃ主役が引き立たない。
どんな岐路に立たされても、カメラが回っていると
思えば真剣に喋れるし、ここ一番の行動にも移れる。
8mm映画を通して人生をどう生きるか客観的に
映し出していく奇抜なドキュメンタリータッチ演出。

デ・パルマの癖もそこかしこに垣間見れて楽しい。
常連のナンシー・アレンや『ファントム・オブ・パラダイス』のゲリット・グレアムが大きな目玉を剥き小姑みたいな婚約者を熱演してるけど、カーペンターの
『クリスティーン』でオンボロ車の霊に憑りつかれる
いじめられっ子アーニーで有名なキース・ゴードンの
カメレオン演技が最大の見せ場。本作で脇役だった彼は
憧れの監督を目指し見事その職に就いた。
ひょっとして今、監督を演じているのかもしれない(笑)
フィルム代も現像料もカネがかかるんだ。
人生を棒に振っちゃ勿体ない。そんな若者が抱く苦悩と挫折をレンズを通し切り取ったブライアン・デ・パルマは
素晴らしい監督だと思う。派手さはないけど、
映画の製作側に興味のある人には心に響く1本になると
思いますよ。

明るくテンションの高いピノ・ドナッジオのサントラが頭の中をぐるぐる駆け巡ってると思えば我が人生もウキウキするような気がしますよ~。とにかくこの映画は音楽抜きには語れない。ビデオ止まりで未DVD化なのが非常に惜しい隠れた秀作。

【2017年7月22日(土)】鑑賞。
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