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シルミド/SILMIDOのtakatoのレビュー・感想・評価

シルミド/SILMIDO(2003年製作の映画)
4.7
 大傑作ここにあり。そして「細かすぎて伝わらないモノマネ選手権」の元ネタもここにあり。最後に本当の「スーサイドスクワッド」がかつて存在したことに震撼。

 久々に血液が沸騰しそうになる漢の物語を見た。あらすじの時点でワクワクする話だなぁ~と思っていたが、いざ見てみるとあまりに非情な権力の仕打ちに抗する男の中の男の物語だった。ちなみに本作は、実際の事件とはデティールは異なるらしい。

 前半は、行き場のない男たちが集められて特訓という燃えざるえない展開。ベタというか、王道な要素を抑えつつ、それぞれのキャラを描写していく上手さが光る。ついに決行の夜。途中で怪我をして置いてかれざるをえない隊員が、酔いもあって「帰ってきてくれよ~」、と泣き出した時点でもう私の中で傑作認定完了。その中で突っ張ってた隊員が、感極まって愛国家を唄い出したところで、あっ!これがあのネタの元なのか!と得心がいって爆笑しつつもホロリ。

 後半は、非情にも国家によって見捨てられた彼らと、特訓の間に彼らとの絆が出来てしまった教官の苦悩の物語に移行する。一番辛く当たっていたような教官が、あまりに不条理な命令に激怒する件で、鬼だと思ってた渋い隊長の苦悩にまたまた涙。そして良い人ぶってた癖に、いざとなると手のひら返す屑野郎に憤りつつ、こういう所が自分にもあるかもって思わされてしまってまた感心。

 そして号泣な終盤と、封印されてしまったことを見事に描くラスト。「最後くらい俺にも格好つけさせろよ!」でもう男泣き。「俺は名も無い屑じゃない!、俺の名は~」のシーンで「北斗の拳」かい!と思いつつまたまた涙。

 それにしても個人の暴力や不道徳なんて、国家、権力、大衆などの匿名な存在の不気味なまでの非情さに比べれば屁みたいなもんである。「時計じかけのオレンジ」でも描かれてたが、駄目な部分まで含めて人間の自由さを認めない社会はほどにおぞましい物はそうあるまい。
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