つのつの

ハードエイトのつのつののレビュー・感想・評価

ハードエイト(1996年製作の映画)
3.7
ポップでハイテンポなブギーナイツやマグノリアへの準備体操のように思えるP.T.Aのデビュー作。
賭博師たちの悲喜こもごもを大変渋く描く作品。
このタッチのお陰でかなり地味な印象があるのは事実だけど、後の彼のトレードマークとも言える卓越した選曲センスと編集のリズムで映画に「ノせて」しまう手腕が光っていました。
終盤の、モーテルとカジノのカットバックのスリリングさが凄い。
またP.T.Aのもう1つの特技である長回し撮影によるジリジリ感も健在で嬉しい。

人間描写も地味ながらしっかりと構築されておる。
フィリップベイカーホール扮する初老の男が、基本的にはいい人そうなんだけど、時折画面から頭部だけ切れたショットが挟まれたりすることで彼の抱える秘密が暗示させるのが上手い。

そんな地味な展開の連続なのに、後半にとあるツイストが加わることでやっぱりこの映画は紛れもなく「P.T.A」の作品なんだなと思える。
「擬似家族」と「幻想を信じて生きる人々」の物語であることが明確になる後半は、かなり切なかった。
彼の後の作品と比べると見劣りしてると感じてしまうけれど、デビュー作にしてはなかなか上出来ではないでしょうか。
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