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わたしの願い/わが望みのすべてのpikaのレビュー・感想・評価

3.5
カメラの緩急や、鏡や窓などを使ったきめ細やかな演出、キャラクターの背中越しに見せる感情表現など、画面の隅々に広がる計算されたきめ細やかな演出が素晴らしく、目で見てるだけでも面白いのに、頭で効果を理解する以前にダイレクトに感情を揺さぶってくる至上の演出。

なんだけど、冒頭の能天気っぷりからバーバラ・スタンウイック演じるナオミが無責任過ぎて不愉快で、成人前後の子供を持つ年齢とは思えぬ思慮の浅さや、厚かましすぎる振る舞いなど、他人のせいにしないってのはいいとしても自分のことしか考えてない胸くそ加減にイライラ。
どんなドン底ドラマが待っていようかと期待して見ていたんだが溜飲を下げるようなジャンルではないわけで。

ベタなメロドラマを作家の個性という語り口で魅了するサークの必殺技は、表層のドラマの奥に深遠なる人間の業や裏表な魅力をあぶり出す魅力を持っているので、絶望の底に堕ちて、もがき苦しむ展開を期待させたキャラクターにさえ同情から親しみ、果ては微笑ましいほどの感動まで与えてくれるもんで本当に凄い。
後の大傑作「悲しみは空の彼方に」へと繋がる要素の一つとして見ればなかなかに興味深い。

ただメロドラマって主婦向け映画なイメージだったんだけど、このナオミにどれだけの主婦が共感し得るのだろうかと考えると、主婦の秘めたる欲望が具現化されているとか、めちゃくちゃ深いのかもしれない。
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