arch

動くな、死ね、甦れ!のarchのレビュー・感想・評価

動くな、死ね、甦れ!(1989年製作の映画)
4.7
大傑作です。
タル・ベーラやタルコフスキー初期作、アレクセイ・ゲルマンもこの列に入るでしょう。それらの作品を思い出させるロケーションやテーマ、描く被写体。スタイルはどの作品よりもドキュメンタリックに寄ってはいるものの、同じソ連や東欧を題材とした作品として類似点を感じる。
本作はそれでいて『スタンド・バイ・ミー』を連想するような少年(少女)の物語として受け取ることが出来る。それは線路というモチーフの連想もあるが、『スタンド・バイ・ミー』の彼らと本作の少年達には生きる場所や時代の差異しかなく、根本的な魂のあり方は変わらないと感じさせる「子供描写」があったからだ。
ワレルカとガリーヤ、その両者の非対称な関係性はガリーヤに守護天使的なニュアンスを感じさせる。特にワレルカが列車に乗って消えた先に、手がかりもなくたどり着くガリーヤは不思議な存在を放つ。

本作において重要な要素である線路と列車は、ワレルカ達にとって遊び相手であり、人生の転機を迎えさせるものとして機能する。脱線はそのままワレルカの人生の転落になり、そんな彼をこれまで住んできた街の外へと導くのもまた列車であるの含めて、常にワレルカの人生を左右するように配置されている。ちなみに画面奥に消えていくカットはアレクセイ・ゲルマンの『フルスタリョフ、車を!』を思い出す。

第二次世界大戦後、スターリン全盛の時代に日本人捕虜の存在感、燃える死体、陰影の強い大人のシルエット、最後にネタばらしかのようにカメラの存在を明かすこと、それらの不穏さと現実に踏み込んでくるような質感、そのどれもが凄まじい映画体験をさせてくれた。
arch

arch