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汚れなき情事のkikiのレビュー・感想・評価

汚れなき情事(2009年製作の映画)
4.6
舞台はイギリスの田舎にある閉塞的な寄宿学校、エヴァグリーン演じる妖艶で魅力的なミス・Gは生徒たちの憧れの的。スペインから転校してきた貴族出身かつ容姿端麗の少女フィアマはミス・Gに気に入られすぐさま注目を浴びるが、ボス格の少女はフィアマが気に食わず嫉妬して執拗なまでのいじめを繰り返す。というのが粗筋だが、主な人物(ミス・G、フィアマ、ボス格の少女)の間での関係性の推移や、嫉妬という醜さと相反するような映像の美しさがどツボであまりにも素晴らしかった。美は罪とはまさにこういう事。

少女たちの何気ない笑い声が嘲笑に聞こえたり、狂気さえ感じる鋭い目線が集団性嫉妬の恐ろしさを物語っているが、何よりも耽美な映像によってそんな醜さも美へ昇華する。夜月の煌めきに照らされながら浅瀬で戯れるシーンが特に印象的で、夜中に寄宿舎を抜け出して全裸になることはフィアマの中の何かが解放された大きな象徴でもあると感じた。

主要人物たちの関係は糸のように複雑に絡み合っていてとても繊細。極度な男性嫌いであるミス・Gは、最初から女性が好きで女学校の教師を務めた訳ではなく、むしろ生徒たちのことは子供のように見ていたと感じた。だけどフィアマに惹かれていったのは、彼女には他の子たちとは違う性的な魅力があったから。そしてあまりにも美しかったから...禁忌を犯した罪悪感に蝕まれていき、物語の終焉に近づくにつれ徐々に顔が窶れ目の下のクマが濃くなり瞳が不安定に揺らいだり、生徒たちの理想像であるミス・Gから遠ざかっていったのもそれが理由だろう。最後森の中でボス格の少女とミス・Gの目が合うシーン、2人に衝撃が走ったと同時にその信頼関係が激しく壊れた。ボス格の少女は、彼女の思うミス・Gはもういないのだと再確認出来てしまった。

一方で、フィアマとボス格の少女の関係性についてはとても分かりやすかった。「大好きな先生に新入りが気に入られるなんて有り得ないわ」と思いつつもフィアマの恵まれた環境と圧倒的な美しさに嫉妬し、周りの人間を巻き込みながら軽度な嫌がらせから言葉の暴力や身体的な暴力へエスカレートしていく。だけど彼女のことを完全に忌み嫌っている訳ではなく寧ろ仲良くなりたいという気持ちも少なからずあったから、ちょっと優しくされたらすぐに落ちてしまう。状況が変わっても全く同じ。ボス格の少女は自分の目で見た事のみを信じ、とても単純である意味最も純粋なのだ。

禁忌を犯すことの背徳感や罪悪感、美しい少女が生まれながら背負った罪、集団の中でのいざこざ、そして嫉妬の醜さなど題材も全描写も好みで本当に出会えてよかったという気持ち。余韻
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