砂

シルバー・グローブ/銀の惑星の砂のレビュー・感想・評価

-
なんだかものすごい映画を観てしまった。

制作途中に当時共産主義国だったポーランドの政情などにより資金が打ち切られた結果未完のままお蔵入りとなり、時を経て公開すべく空白部分となったシーンは台本のモノローグ(しかも映画とは無関係なワルシャワの日常シーン)で済ませるというメタな力技にも驚かされるが、まずそもそもの内容が難解だ。
ストーリー自体は複雑であるがわりとシンプル。だが、過剰な演技で(意図されたものらしい)セリフもあまりに抽象的な詩的あるいは哲学的な自問自答ばかりが長回しで散発し、それらはストーリーの展開自体を語っているものではないため余計に混乱する。さらにメタ的なセリフまで突如飛び出すなど、次第に何を観ているのがわからなくなっていく。SFではあるがSFは舞台としての手段となっている。

「神」の視点から社会や人間を観測するかのように描く、という手法はゲルマンの「神々のたそがれ」を否応なく想起させるし(筋はわりと似ているかもしれない)、先述の通りメタ的な場面が突如現れることやセリフまわしによる自己言及、一大叙事詩として迫力あるシーンの数々にニヒリズムを混入させた結果、なんだかよくわからないがすごい作品を観た、という記憶が残った。今でいうPOV、が意味を持った手法となっているなど撮影手法もインパクトがあった。
砂