ヴェルヴェっちょ

SOMEWHEREのヴェルヴェっちょのレビュー・感想・評価

SOMEWHERE(2010年製作の映画)
3.5
起伏に富んだストーリーではないが、ソフィア・コッポラの意図したところは明らかにそこではない。私小説的な作品。

L. A.のホテル“シャトー・マーモント”で暮らしているハリウッドの映画スター、ジョニー・マルコ(スティーヴ・ドーフ)。
フェラーリを乗り回し、パーティで酒と女に溺れる彼の日々は、表面的な華やかさとは裏腹に、孤独で空虚だった。 そんなある日、彼の元を前妻レイラと11歳の娘クレオ(エル・ファニング)が訪れる。
レイラが家を空けるため、クレオはしばらくジョニーのもとで暮らすという。
シャトーで過ごす穏やかな2人の時間。ジョニーの肩にもたれ、うたた寝するクレオ。ジョニーが寝ている間に朝食の支度をするクレオ。そして、他愛のない会話。それは、本来なら父と娘が触れ合うごく普通の風景だったが…。

静止画の長回しが印象的な映画だった。
俳優ジョニーはどこか落ち着きがなく、うわの空。そう、ここではない「どこか(SOMEWHERE)」を渇望している様が伝わってくる。 役者という職業柄、いろんな人生を追体験するものだと思うが、その中心にあるはずの自分が空虚だという皮肉。
そんな虚ろな日々に一陣の風、クレオ(エル・ファニング)の登場。途端にジョニーの毎日が輝き出す。 それにしてもエル・ファニングの美しさ、天使的ともいえる透明感がすごい。
ショービジネス界では得られなかった日常の輝きをジョニーは体験する。彼の世界が空虚だっただけに、その輝きは一層引き立つ。

翻って、「俺は空っぽの男だ」「何者でもない」と前妻に電話で泣きつくジョニー。 個人的には、この台詞は余計!画がすでに物語っているのだから、わざわざそれを説明する野暮は避けてほしかった。そこだけは残念。